スーツのジャケットに入っている切れ目。
スーツのジャケットの背中の裾にある切り込み、割れ目を「ベント」と言います。
ベントは真ん中、横に切れ目が入っているスーツもあれば、切れ目が入っていないスーツもあります。
スーツ選びでは、「スーツのジャケットの背中部分にある切れ目は、真ん中と横とどちらが良いのか?」と疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
また、「真ん中、横、どっちが流行りなのか?大人向き、若者向きなどの種類があるのか?」と悩んだり、気にされたりする人もいるのではないでしょうか。
スーツ販売歴15年以上の筆者が、スーツの切れ目の「ベント」についてご紹介します。
スーツの切れ目のベント選びでお困りの人、ベントについて知らない人は参考にしてください。
スーツのジャケットにある切れ目!ベントとは?
スーツのベントは「そもそも何で付いているのか?」と疑問を持つ人もいるのでないでしょうか。
ベントはジャケットの着用時に運動性を向上するためや着やすくするために、背中の裾に切り込みを入れています。
ベントには種類があり、「センターベント」、「サイドベンツ」、「ノーベント」と種類があります。
選ぶベントの種類によって、印象が変わります。
センターベントとは?サイドベンツとの違い
センターベントとは、スーツのジャケット背中の中央に一か所だけ切れ目(ベント)が入っているデザインです。
主にアメリカ式スーツに多く採用されています。
センターベントは動きやすさを重視したデザイン
センターベントは元々、乗馬の際にジャケットの裾が広がりやすいように考えられたディテールです。
歩いたり座ったりするときに裾が邪魔になりにくいというメリットがあります。
センターベントはカジュアルな雰囲気を演出
サイドベンツ(横の切れ目)に比べると、センターベントはややカジュアルな印象を与えます。
ビジネススーツだけでなく、ブレザーやカジュアルジャケットにもよく使われています。
センターベントのシルエット
センターベントは、後ろ姿がスッキリと見えるのが特徴です。
ただし、お尻が大きい体型によってはベントが開いてしまい、ヒップラインが目立つこともあります。
センターベントは、動きやすさとカジュアルさを兼ね備えた、定番のスーツデザインです。
スッキリとした後ろ姿を演出したい方や、初めてスーツを選ぶ方にもおすすめです。
センターベントの歴史
今では当たり前のセンターベント。
元々スーツの原型ができた時代では、スーツに大きな運動性を求めていなかったので、ジャケットにベントは付いていませんでした。
時代が進むにつれ、運動性が求められベントが付きました。
センターベントは乗馬の際に足を左右に開きやすくするためにできたという説があります。
日本語では「馬乗り」と言われています。
センターベントのスーツは軽快な印象を演出します。
サイドベンツとは?センターベントとの違い
サイドベンツはジャケットの後ろ身頃の両サイド(左右)に、縦の切れ込み(ベント)が入っています。
通常、左右2か所にスリットがあるデザインです。
細身のスーツやヨーロッパブランドのスーツに多く採用されています。
サイドベンツのシルエット
サイドベンツは横から見たときに、ヒップラインがきれいに見えるのが特徴です。
スーツのジャケットが体に沿いやすく、後ろ姿もすっきりとした印象になります。
サイドベンツはパンツ、スラックスのヒップラインと一体化するので、センターベントより足が長く見える効果があります。
サイドベンツのフォーマル度
サイドベンツはセンターベントよりもややフォーマル。ヨーロッパのクラシックなスタイルに多く見られる傾向で、ビジネスシーンやフォーマルな場面に最適です。
サイドベンツの歴史
サイドベンツは軍人がサーベルを腰にぶら下げやすくするためにできたという説があります。
日本語では「剣吊り」と言われています。
ノーベントとは?センターベント・サイドベンツとの違い
ノーベントは名前の通りに、ジャケットの背中の裾部分に切れ込み(ベント)が一切ありません。
見た目の美しさを重視したドレッシーなスタイルとなります。
ノーベントはシルエットがきれい
ノーベントは切れ目が入っていないことから、後ろ姿がスッキリとしており、体のラインがなめらかに見えます。
フォーマルで洗練された印象を演出します。
ノーベントは動きやすさはやや劣る
ベントがないため、動きにくさを感じる場合があります。
特に椅子に座ったときやポケットに手を入れたときに裾が引っ張られやすさがあります。
ノーベントはフォーマルな場に適している
洗練されたフォーマルな印象を演出するノーベントは、タキシードやディナージャケットなど、格式の高いフォーマルウェアによく使われます。
ノーベントの歴史
ノーベントはスーツの原型が誕生した際は切り込み、割れ目が入っていませんでした。
馬に乗る際に裾が邪魔にならないように入れたのが「センターベント」。
対して、ノーベントは切り込みを入れないドレッシーなスタイルとして、フォーマルなシーンで使用されるようになりました。
現在では、ノーベントはタキシードやフォーマルなどの礼装用のスーツの形に用いられています。
センターベント・サイドベンツ・ノーベントどれが正解?
スーツのベント(背中の切れ込み)には「センターベント」「サイドベンツ」「ノーベント」の3種類があるとご紹介しました。
しかし、どれが「正解」という絶対的な基準はありません。
センターベントはアメリカントラディショナル(アイビースタイル)に多く、動きやすさ重視。ビジネス全般(特にアメリカンスタイルが好きな人)で使え、動きやすさを求める人におすすめ。
サイドベンツはブリティッシュ(英国)スタイルに多く、型崩れしにくく、ポケットに手を入れても美しいシルエットを保てる傾向。
フォーマルや格式ある場面(英国調のスーツに◎)スマートな印象を重視したい人におすすめ。
ノーベントはイタリアンスタイルやタキシードなどドレッシーなスーツに多く、フォーマルでエレガントな印象を演出しますが、動きやすさはやや劣る。
パーティーや式典などフォーマルな場におすすめ。
スーツのベントは用途や好みにより選ぶのがベスト
ビジネスで万能なのはセンターベントやサイドベンツ。英国調が好きならサイドベンツ。
よりドレッシーフォーマルシーンでの使用ならノーベント。
自分の体型や着用シーン、好みに合わせて選ぶのが「正解」です。
センターベント、サイドベンツ、ノーベントの違いと特徴についてご紹介しました。
ご紹介したようにセンターベント、サイドベンツ、どちらがが正解、流行り、どっちが主流ということはありません。
快適さを求めるならセンターベント、足を長く見せたいということであればサイドベンツと、自分が求める着やすさや印象によって選ばられると良いです。
今回ご紹介した内容が皆様のスーツ選びの参考になれば幸いです。